ヘビロテ躁鬱女
トイレの通路とキッチンの間には、狭い通路があり、その奥には縦長の畳二条分くらいの、おしぼりを補充するスペースがある。


平たく言えば備品倉庫だ。私は今そこに連れ込まれそうに、体を引き摺られている。


――放して!


おしぼりに封じ込まれ声にならず、くぐもった濁音しか発せなかった。


男の片腕は強く口元に回し、すらっと伸びたもう片方の腕は、倉庫のドアを閉め、素早く鍵を掛けた。


カチャリと冷たく回された鍵に体が強張った。


「強引なことをしてごめん。どうしても二人きりになりたかったんだ……」
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