【完】春紫苑




流に近付いても近付いても、涙で歪んだ視界は、彼の顔を綺麗には写してくれなくて。




「気を付けなさいよ、バカ…。ほんとに、死んじゃってたかもしれないんだからね」


「……うん」



「流のくせに心配かけて………泣かせるなんて、有り得ない…」



「ごめんね」




謝ってるくせにさっきから流はどことなく嬉しそう。




「バカで明るくて、それが取り柄でしょ…なのに、なのに……」


「うん、うん…」



「怖かったよ流…死んじゃったら……流が死んじゃったらって思うと怖かった。怖くて……仕方がなかった」



「ごめんね、ごめんね…美琴」







生きてて………良かった。

もう、大切な人を失うのは嫌なの。



そして、なにより。


また同じ苦しみを将光に与えたくなかったの。










< 329 / 474 >

この作品をシェア

pagetop