廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『悟さん、ねぇ悟さん』
お陽は優しく悟の背中を撫でてやる。
『あんたは今まで、たくさんツラい目に遭ってきたじゃろう。
神様はね、きっと見ていて下さるよ。
じゃから、ここらで腹を括ろうじゃないか』
自分が遊廓に売られたのも、悟が戦地に向かわねばならないのも、与えられた運命なのだと
お陽は悟に訴えた。
『逃げずに、投げやりにならずに一生懸命勤めようじゃないか。
そうしたら、きっと、きっとね。素晴らしい幸せがうちらを待っとるんよ』
悟は、泣き顔でお陽の瞳をじっと見ていた。
そうして、おぼろげに笑う。
『全く、嫌な世の中に生まれてきたもんだ』
身体を売って暮らす女郎と、逃亡歴のある兵隊。
それでも二人は、これから幸せになりたいという望みを持っていた。
命あるかぎり
命あるかぎり