廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
時が来た。
悟は、また真新しいカーキ色の軍服に袖を通す。
その表情は、やはり険しい。
お陽は鏡の前で白粉を落とし、髪を櫛で解いている。
そして、気質の女のようにブラウスの上からセーターを着てモンペをはいた。
『悟さん、笑わない?』
彼の表情は、引きつっていたが昨夜のように心が揺さぶられてはいないようだった。
『お陽さん。あんたは化粧を落としても綺麗だよ』
朝陽は昇る。
二人はお互いの顔を見つめ合っていた。
『さよなら』
お陽は俯いて呟いた。
『大罪人は嫌ですか?』
『あなたこそ、女郎は……』
悟はお陽の細い身体をぎゅっと両手で抱き締めた。
『……きっと帰ってきて、あたいをここから……』
『約束する』