ニ択(止めた手から)
「成る程…」

幾多は微笑むと、2人の間にあった伝票を掴み立ち上がった。

「君は戻った方がいい。君がいるべき世界に」

「え」

思わず見上げた少年の肩を叩くと、幾多は歩き出した。

「その彼女と一緒に、健やかに暮らすがいいよ」

幾多は店を出ると、人波を掻き分け歩き出した。

数分後、幾多は迷うことなく、真横を通り過ぎて止まった車に乗り込んだ。

「新車かい?」

幾多は、運転席に座るサングラスをした女に微笑みかけた。

「はい」

女は頷くと、車を発車させた。

「今回は、単なるいじめですよね。幾多様が関わるような問題ではないのでは?」

「そうでもないさ。いじめられてる大半の子供は、心美しき者達さ。まあ〜例外もあるだろうけど」

幾多は窓の外を眺めながら、フッと笑うと、

「それに今回は、相手がね」

顔を前に向け、目を細めた。

「例のものは、用意できてるかい」

「はい」

「相変わらず、仕事が早い」

幾多は、後部座席にあるものにちらりと目をやった。

「そろそろだね。運転を代わろう

「ご武運を」

車は静かに止まると、女は下車した。

そして、再び発車した車に頭を下げた。

「では、行くか」

幾多はハンドルを握り締めると、一気にスピードを上げた。

「免許がなくても、何とかなるものだな」

そして、町外れにあった選挙事務所に突っ込んだ。

恥ずかしげもなくでかでかと貼られた笑顔の写真目掛けて、アクセルを踏むと幾多はにやりと笑った。

「さてと…公約に誤植があるんだけど、その件で答えてくれる人はいるかい?いや、先生でもいいけど」

幾多は女がかけていたサングラスをかけると、車から下り、胸ポケットから拳銃を抜いた。

「ヒイイイ!」

支援者と話していた代議員は突然、事務所に殴り込んできた幾多に戸惑いながらも、周りに目配せをした。

幾多を囲む数十人の警備員達。

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