ニ択(止めた手から)
その瞬間、車は爆発した。

幾多から別れた女は、歩きながら、隠し持っていた爆発スイッチを押した。

事務所の入り口は吹き飛び、爆風に乗ってチラシが町中に飛び散った。

「いいタイミングだ」

血塗れになり、転がる警備員や支援者達の中で、幾多は血を流しながらも立っていた。

一番奥にいた代議員は、軽症ですんでいたが、目の前に起こった惨劇を見て震えていた。

「お、お前は!な、何を!」

「さあね」

幾多は歩き出した。

爆破のタイミングは、女に任せていた。

下手したら、死んでいたであろう。

しかし、幾多は思っていた。それで死ぬならば、自分はそこまでだと。

自分で爆破のタイミングを決めない。そのような行為が、今まで幾多を生き延びさせてきた。

幾多の持論はこうだ。

生まれた生物に、生きる権利はある。しかし、生き抜く権利はない。死ぬべきものは、死ぬべき時に死ぬ。

「この国に、屑は主に五種類いる。ヤクザに警察、そして、官僚に政治家。最後は…」

幾多はゆっくりと近付きながら、腰が抜けた代議員に近付いていく。

「そんなやつらから甘い蜜を吸う…一部の民衆だ」

幾多は代議員の足を払うと、倒れた代議員に向けて、引き金を引いた。

その瞬間、二度目の爆発が起こった。

車の爆破は二回起こるように、設定されてあった。

それは、爆破を聞き付け、直行してくるであろう警察に向けたものであった。

その爆破をわかっていた幾多は、その隙に現場を後にしていた。

予想外の三度目の爆破を聞きながら、幾多は数メートル向こうで頭を下げる女を軽く睨んだ。

「今の爆破は何?」

幾多の質問に、女は頭を下げながら答えた。

「あなたの支援者から言われました。こんな程度で、あなたを失っては困ると」

「フン」

幾多は鼻を鳴らすと、女のそばを通り過ぎた。

すると、目の前に…ワゴン車が止まっていた。

その中には、武装した人が数人いた。

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