くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
瑠璃……。
その名前はあたしの心を激しく揺さぶった。
まさか……とは思う。
たびたび白昼夢で見た、あの……。
宮司さんの話は続く。
「だが、瑠璃は美しい声をしておった。
その歌声は天女のようだと地元では評判になっていたほどじゃ。
瑠璃は内気じゃったからめったに歌わなんだが、末っ子の赤子を寝かしつける時にはよく子守歌を歌ったそうじゃ。
その歌声は十里離れても風に乗り聴こえたと言われる。
その年このままでは飢饉(ききん)になると嘆いた父親を見た瑠璃は、毎日海に出て竜宮があると伝わる島に渡り願った。
「どうか雨を降らしてください、代わりに私の持つものを何でも差し上げます」と。
それを100日間続けたある晩、いつものように子守歌を歌う瑠璃のもとに龍神が人の姿を取り現れた。
龍神は瑠璃の歌声に聞き入り、その歌声と引き換えに雨を降らせようと約束した。
そして、翌日から3日間山潮に雨が降り続いた。
そのお陰で作物の芽はすくすくと育ち、飢饉の心配はなくなった。
その代わり瑠璃は二度と歌えなくなった。
それでも、瑠璃は感謝を込めて竜宮にお百度参りをした」