くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「『どうか嘆かないでくださいませ、あなた。私は幸せでした。
愛し愛され……ややまで授かったのですから。
これ以上なく幸せをいただきました。
思い残すことはありません。
ただ……ただひとつ願うなら、もっとあなたと共に過ごしたかった。
あなたと一緒に花や風を愛でて、ややの成長を見守りたかった。
この子はどんな愛らしい顔で笑うのか……どんな風な大人になるか……楽しみでした。
でももう……。

叶うなら、来世もあなたと……私は……千年経ってもあなたを愛しています……きっと、何度生まれても……あなたを……見つけ……愛しま……す」


瑠璃はそう言い残し、息を引き取った。


そしてその直後、瑠璃の腹から自力で赤子が生まれた。

己を責め嘆いた龍神は瑠璃の形見となった御子を地元の子のいない人のよい夫婦に預け、竜宮から去り一番高い山に自らを封じ込め眠りに就いたそうじゃ。
瑠璃との約束を果たすために。

そして、龍神が去った後に1ヶ月続いた雨は止み、島と岸が繋がった。

これが毎年繰り返され、瑠璃が亡くなってから御子を生んだ事より『来る産み』……もしくは『来る海』くるうみと名付けられたそうじゃ」
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