くるうみ。~あなたと過ごした3日間~



「あの……ありがとう、今日は。よかったらお茶……飲んでく?」


あたしは自分でも思いもしないことを口走ってた。


野島はすぐには返事しなくて、その『間』が不自然なまでにだいぶ開いたのだけど、あたし自身あわあわと慌ててたから、気にする余裕なんかなくて。


「今日は遠慮しとくわ。また今度な。鈴本の父ちゃんに殴られたくないし」


「え、うちの父さんそんなに暴力的じゃないよ?」


あたしは不思議に思って顔を上げてみたけど、野島の顔は陰になっててよく見えない。


「娘は大事に決まってんだろ? こんな姿見せたらどんな誤解されっかわかんないしな」


こんな姿ってどんな姿?とあたしは不思議に思えたけど、確かにあたしは雨の中にいたからびしょ濡れだし、転んだせいで制服は泥だらけ。

おまけに足首を捻ったし。


家族が知ったら絶対に追求されるわ。


だから、あたしは自分ひとりじゃ絶対にムリ、と思えた。


言い訳にしろ本当の理由を説明するにしろ、あたしひとりじゃなんとなく説得力に欠ける。


でも、野島ならなんとなくうまく言いくるめてくれそうな気がした。
< 32 / 305 >

この作品をシェア

pagetop