くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
ちりいん、と伸びやかな風鈴の音があたしの耳にやたら大きく聴こえました。
日暮れに従って蝉の鳴き声が止んできた筈なのに、なんで今はやたらと五月蝿いんだろ。
「お風呂ありがとうございます……うわっ!? 鈴本、この惨状はいったい何が起きたんだ?」
お風呂から上がったらしい野島の声がしたけど、それはすぐ驚きに変わるのは当然でしょ……。
あたしは20分くらいじゃがいもの皮むきに挑戦したんだけど、手を切るなんて古典的な事はもう3回やったし、窪みをえぐるつもりで厚さ2センチの皮を剥いたりしちゃってて、それでもじゃがいものあちこちに皮は残ってるし、凸凹がさらにひどいし、ある芋なんかもとの3分の1の小ささになってた。
緊張して汗をかいた手のひらから包丁がすっぽ抜けて2回ほど壁や床に突き立てたし、じゃがいもの皮が派手に飛び散ってるし。
あたしが切った時に出た血も新聞紙に点々と染みてたし。
……なんであたしはこんなに不器用なんだろ、と泣きたくなってきた。
いも……じゃなくて妹の茉莉花の方がずっと器用だ。
何も意識しなくてもりんごの皮もすらすら剥くし、シチューやじゃがいもの煮っ転がしも作れるんだもん。