くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「野島、家族いないの。 なんで?」


後から思い返せばすごく不謹慎な質問ではあったけど、片膝を立ててそこに両手を載せた野島はあっけらかんと答えてくれた。


「ん、小学生のころに事故でね……小3だったかな? それからは天涯孤独に独身貴族をエンジョイしてます」


「意味わかんない。 でも、小3でもう……」


事故って言うなら交通事故だろうな、と想像したあたしは、野島のことを本当になにも知らない自分に気付いた。


今まで……知ろうともしなかったんだ。


存在感がなくて空気な野島は、ずっと今までクラスメートに馴染む事がなかった。


特にクラスで行われたレクエーションや行事の班決めで必ずあぶれてた野島を、あたしは可哀想と遠巻きに見てただけで、誰かがどうにかしてくれるだろうな、と漠然と考えて自分から関わろうとしなかった。


だから、クラスのリーダー格の子や先生に命じられて人数が足りない班が渋々と引き取うけてただけで、誰かが積極的に野島に声をかける事はしなくて。


学年総出であった親睦目的の海への遠足でも、野島は1人だけぽつんとコンビニのおにぎりを頬張ってただけ。
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