くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「何するのよ!」


あたしは当然ながら、野島をぶん殴ろうと手を振り上げたんだけど。


なぜかその瞬間にあたしの中で龍神像を前にした時と同じように爆発が起こり、痛みと痺れで縛り付けられた意識が白い靄の中に落ちてゆく。






――歌。


やっぱり聴こえる。


歌ってるのは若い女性かな。


見えてきた――。


和服を着た若い女の人。

腰より長い黒髪は後ろで束ねられていて、地味な色合いの着物? を着てる。


顔は木の葉で隠れて見えない。


あれ? もうひとり傍らにいるのに気づいた。


白い和服? を着てる。けど、体格から言えば男性に見えた。


男性の手が動いて何度か躊躇うようにさ迷った後、それは女性のお腹に当てられた。


よく見れば女性のお腹が膨らんでるから、もしかしたら2人は夫婦なのかもしれない。


「やや子はきっと元気に育ちますわ。あなたの御子なのですから」


女性は嬉しげに話すけど、男性は浮かない声音で答えた。


「……瑠璃、つらくはないか? 父なし子を授かったと迫害され、毎日苦しかろう? 私の館に……」


だけど、それ以上言わせたくないのか女性……瑠璃さんが遮った。
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