予言と未来
思わず目を開ければ、此方へ向かって来る1人の少女。
姉と同じように、髪をツインテールに縛り、大きな瞳に強い意思が浮かぶ――彼女の姿。
「来るなっ!」
叫ぶと、愛光は躊躇いつつも立ち止まった。
「ライネス、手当てしなきゃ――。」
「だから、ほっとけって言ってんだろ。」
「ほっとけないから追い掛けて来たんでしょ!」
そう言って、近寄って来る愛光。
立ち上がろうとして、ライネスは気付いた。血を失い過ぎたのか、躰に力が入らず、頭も くらくらする。
近寄って来る愛光を見て、ライネスの脳に、昔の記憶がフラッシュバックする。
赤い血に染まる、華奢な背中。
灰色の、閉ざされた世界。
彼の、残酷な微笑み。
伸びて来る、無数の手。
「来るなっ!!」
自らの頭を抱えて、ライネスは怒鳴る。異常と迄 言える彼の様子に気付き、愛光は再び立ち止まった。
「……ねぇ、ライネス。前も訊いたけどさ、私の事 嫌いなの? 私が人間だから?」
「……違うって、前も言っただろ……。」
ライネスの躰は、震えていた。
幼い子供が怯えているようだと、愛光は思った。