透叫

雪恵は花を活け終え、丸いパイプ椅子をベッドへ近づけて座り、サイドテーブルに置かれてあるリンゴを剥き始めた。

「それがね、また帰ってこないのよ。もう4日になるわ。心配で電話をかけてみるんだけど、出ようとしなくて…」

こちらも眉間に皺を寄せて悲しい表情を作っている。
手は止めることなく、しゃりしゃりと皮を切らさないように剥いていく。
雪恵の膝に乗せられた皿の上に、向かれた皮がくるくると降りていく様を見つめながら、四黒はそうか…と呟いた。

「学校の友達に連絡して聞いた事もあるんだけど、なんでもホストをやってる男の人の所に転がり込んでるなんて噂があるみたい」

珍しく母親らしい事をするもんだと、感心して雪恵を見つめると、両手を膝に降ろして俯いていた。
仮にも母親だからやはり心配なのか。
しかしホストとはまた…。

「それが本当なら困ったもんだな」

恐らくカモにでもされているのだろう。
ホストなんて所詮、女は金をくれる客としか見ていない。
良子がホストに貢ぐほどの金を持っているとは思えないが…まさかな。
四黒は考えながら雪恵の肩をさすった。
一時でも愛した女性を愛しく思わないこともない。
時折こうして可愛い面を見せるのだから。

「あの子、そんなにお金持ってたかしら…。バイトはしてたみたいだけど、ホストなんてそれだけじゃ足りないくらいお金かかるのでしょう?」

実際、ホストクラブに出入りしてるかは分からないが、恐らく一度くらい年齢を偽って入店したことはあるだろう。
店でどれだけの料金がかかるのか知らないが、テレビや雑誌などで見る限り、安くても数万単位の世界だ。
もし良子が店に通ってるのだとしたら、バイト代だけではすぐに底がついてしまうだろう。

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