透叫

その日の夜、四黒は紙とペンを持ち、昨夜と同じ時間に同じ場所へ訪れた。
黒いポストが現れた場所だ。
そこには昼間確認した時にはなかったが、いま時分にはそれが現れている。

四黒はそろそろと近づき、周りに誰もいないことを見て取ると、持ってきたメモ帳に文字をしたためた。
それをポストへそっと投函する。
直後に変化が現れる事はなく、四黒はそのまま静かに病室へと戻った。
明日が楽しみだな。

同時刻、雪恵は不倫相手の自宅にいた。
相手の男性は大手企業会社の社長で50代前半。
その金持ちっぷりから、さぞかしお腹の方も立派なのかと思いきや、意外とがっしりしていて筋肉が程よくついている。
そんな所にも惹かれ、雪恵は社長にめろめろだった。

自宅はもちろん高級マンションの最上階で、眺めも部屋の設備やインテリアも最高。
だが人には少なからず欠点というものがある。
この社長も例外ではない。

「雪恵。酒はどうした」

社長は酒好きだが、飲みすぎると気分が高まり、暴力的になるのだった。
雪恵はそれも承知で社長と逢引をしている。

「今日はもう、およしになった方がいいですよ」

そう言ってみるが、社長の目は鋭く雪恵を貫く。
ベッドルームにある革張りのソファに、バスローブ姿でワインを飲んでいた社長は突然立ち上がり、隣に同じくバスローブ姿で座っていた雪恵の髪の毛を鷲掴みした。
そのまま腕を持ち上げ、雪恵は激痛に悲鳴を上げる。

「私が持ってこいと言っているんだ。お前は黙って従えばいい!」

そう言って力任せに雪恵を床へ叩きつけるように放った。
頭を押さえながら痛みと恐怖に涙を流し、雪恵はおずおずと部屋に備え付けられたワインセラーへ向かった。

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