透叫

翌日の透叫は寒かった。
病院の窓から見える景色はだんだんと茜色や黄色に染まり始め、北から吹く風も冷たい。
灰色に雑ざって雲がゆっくり流れていく。

陽の射さない秋の午後、四黒は気持ちが高ぶっていた。
もちろん、外の景色や天気のためではない。
昨晩書いた願い事が叶う事が待ち遠しかったからだ。
病院から出れないのがもどかしく思っていると、突然主治医が部屋へやってきて言った。

「四黒さん、先日の検査の結果、病状は良好ということですので、退院していいですよ」

四黒は心の中でガッツポーズをした。


その頃、雪恵は自宅で電話を引っ切り無しにかけていた。
良子の友達に、良子が転がり込んでいる男の話を聞くためだ。
だが思うように身体を動かす事ができず、やきもきしながらの電話だった。

昨晩、社長に散々暴力をふるわれて身体はボロボロになり、だが病院にも行けないからと自分で手当てをしたのだった。
恐らく骨にひびが入っているであろう左腕を三角巾で首から吊るし、顔や四肢に残ったアザに塗り薬を塗った。

腫れぼったい目を必死に開き、良子の
部屋にあった手帳を開いてアドレスを確認し、片っ端から電話をかけた。
良子の交友関係など知らなかった雪恵は、アドレス帳に女の名前より、男の名前が多いことに驚いた。

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