透叫
「もしもし、四黒良子の母親です。良子のことで聞きたいのだけど…」
何件目か分からない電話の相手は女性だったが、想像よりも大人っぽい声で、実際に聞いたところ20歳の大学生だという。
「良子ちゃんがどうしたんですか?」
そう返してきた女性の名前は、手帳に“樹乃”と書かれている。
良子は几帳面で、手帳にしっかりメールアドレスや電話番号の他に、メモ欄に関係まで書いていた。
樹乃のメモ欄には『バイト先の先輩』と書かれている。
「樹乃さん、最近良子を見なかった?もう何日も家に帰ってきてないのよ…」
雪恵はしんどい身体を庇うように、ソファにゆったり座りながら電話をしている。
電話の向こうで、樹乃が驚いた声を上げた。
「良子ちゃん、家に帰ってないんですか?昨日も元気にバイト来てましたよ」
樹乃の話では、良子は元気にバイトをしているらしい。
それどころか、最近好きな人ができたとはしゃいでいたという。
「そう…。とりあえず、元気そうで安心したわ。ありがとう、樹乃さん。良子のこと、何か分かったら電話くれるかしら?」
「……はい。分かりました」
少し落ち込んだような返事に、雪恵は不思議に思ったが、そのままお礼を言って電話を切った。
良子はどこにいるの…?
誰も居場所を知らないなんて、どういうことなのかしら。
まさか、相手の男性ってホスト以外に危ない事してる人なんじゃ…。
元気なのは確認できたが、行方がわからないままの良子に、雪恵は不安が募るばかりで嫌な想像をしてしまう。
アドレス帳に載っている名前と関係を見る限り、それらしい人は見当たらない。
まだかけていない人はいるのだから、諦めずにかけよう。
そう決意して、雪恵は再び受話器を取った。