透叫
雪恵からの電話を終えた樹乃は複雑な思いだった。
良子は飲食店と掛け持ちでやっているバイト先の後輩だ。
四黒店長の娘さんだとは、良子がバイト先で自己紹介をした時に知った。
一生懸命に仕事を覚えようと頑張る良子を見て、樹乃は四黒店長のことと割り切ることにした。
だがさっきかけてきたのは四黒店長の奥さんだ。
自分がされてきた仕打ちを思い返さずにはいられなかった。
罪悪感が胸を締め付ける。
「良子ちゃん、大丈夫かな…。家出するような子には見えないのに」
気を紛らわすように呟くと、電話がかかってきた。
携帯のディスプレイには『高宮白』と出ている。
樹乃は一気に憂鬱だった気持ちを吹き飛ばし、通話ボタンを押した。
「白さん!?」
気持ちが押さえきれず、思わず声が裏返った。
樹乃は恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じたが、高宮は逆に冷めたような溜め息を吐いている。
普段こんなことで怒るわけがないのに、電話越しの高宮は明らかに怒っているようだった。
「どうしたの?白さん…」
怒気を含んだ溜め息に不安を覚え、樹乃は恐る恐る声をかける。
だが高宮は言葉を発しようとせず、変わらずに溜め息を吐く。