そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】

秘密

次の逢瀬の日。

思いっきりお酒をあおった。

酔いで朦朧としていなければ、こんなことできない。

奥様への罪悪感ではなく自分が人として最悪の落ちていく
醜い生き物のようで自分自身に吐き気がした。

それでも私はドアをノックした。
そう、これなしでは、生きられないから…

コンコンコンコン。

しばらくしてガチャっという音がして、

内側からコンコンコンコンコンと5回ノック音がする。

あの人とのサイン。

ここから、私は演者。
あの人をどう想っていたかなんてもう忘れた。

男なんて、誰もがこんなものだ。
自分勝手で利己的な生き物。だから、利用すればいい。
失ったものがあったとしても、その分奪えるものは奪ったらいい。

あの人は部屋の奥で待っているかと思ったのに…
それなのに、戸口のそばに突っ立っていた。

ドアを閉めた瞬間その強い視線に囚われ
私は勢いよくドアに押し付けられ強く抱きしめられた。

その夜は、立ったまま…私は抱かれた。

以前にも増して執拗に責め、私を快楽へ導き尽くすあの人の

その執着心を怖いと思った。

取引としての関係は冷たく私の心を昔のように
凍らせてしまった。

本当の想いは胸の奥底に秘めたまま…
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