Summer again with
なんで、こんな子供を相手にするんだろう。
せっかくかっこいいんだから、他に可愛いひと、ナンパしてくればいいのに。
不思議に思いながらも、私は『いいです』と首を横に振った。
彼は『そっかぁ』と小さく呟くと、岩から降りた。
…やっと、どっか行ってくれるのかな。
彼は地面に足を置くと、こっちを振り返った。
『名前は?』
…その顔は、何故かさっきより嬉々としていて。
な、なんでそんな顔、してんの。
訊かれた私は、戸惑いながらも口を開いた。
『…み、未海』
『ミミちゃんね』
…明るく、笑う。
彼の後ろで見えるのは、光輝く海で。
…う、わ。
目を細めて私を見つめる彼に、心臓が大きく鳴った。
『俺、ここの海岸にある海の家でバイトしてんの。よかったら来てね』
そういえば、さっき人が集まっている屋台を見た気がする。
もしかしてこれの宣伝のために、私に話しかけてたのかな。
私が小さく頷くと、彼は笑顔でその場を去ろうとする。
…あ。
『…あ、あのっ……』
突然口から零れた言葉に、私自身も驚いた。
彼は振り返ると、優しい声で『ん?』と言う。
…変な、衝動だった。
明日あの海の家に行けば会えるだろうし、今じゃなくてもよかったんだろうけど。
でも、今じゃないといけない気がした。
今訊かないと、二度と訊けない気がした。