Summer again with


『…そ、そちらの…名前は…?』


そのひとは、『ああ』と思い出したように笑った。

そして楽しそうに、誇らしげに、教えてくれた。

その、名前を。


『ナツ』


…海が、輝く。

体の温度が上がって、汗が頬をたらりと伝う。


…君がいる季節が、生まれた。






次の日、私は夏休みの課題と五百円玉を持って、おじいちゃん家を出た。

家族は今日、おじいちゃん家でゆっくりすると言っていたけど。

私は、わざわざ日焼け止めを塗って、外に出た。


目指すのは、海。

半袖のTシャツを着て、昨日言われた場所へ向かう。

かけられたすだれをくぐって、店のなかへ入った。

木で作られた椅子と机が並べられ、ちらほらと人が座って、食事をしたり談笑したりしている。


メロン味のかき氷を買うと、私は海の家を出ようとして、その姿を目に映した。


『…あ』


ラムネの入ったケースを持った彼が、ちょうど店のなかへ入ろうとしていた。


『来てくれたんだ!?』


ケースをその場に置いて、ぱあっと顔を輝かせる。

私は目をそらしながら『かき氷が食べたかったから』と可愛くない返事をした。


『いいよ、ありがと!』


腰につけるタイプのエプロンに、白いタンクトップ。

肩にタオルをかけた彼はなんだか爽やかで、その名前によく似合うひとだなと思った。



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