悪魔の彼






あの時隠し部屋で語ったこと



キスのこと





思い返していけばいくほど、忙しい毎日のなかで流したくても流せなかった涙が溢れてくる。







フランテの顔を見て安心したのか、思い出を振り返って感情が溢れたのか

それは私自身にもわからなかった。





とにかく、泣いて泣いて泣いた。


温かい目で私を見つめ、温かい手で私を撫でるのは、フランテだった。








「ごめっ……なさ…い…………なんか………」





「何も言わなくて良いわ。貴女が何を言いにきたのかはだいたいのところ分かるわ。心配しないで。私も協力する。」





日だまりのような響をを含む彼女の声は、元女王ならではの寛大な心を持ったものにしか出せない、独特の雰囲気を纏っていた。









「貴女までもを泣かせるとは…………ニアもアイリウスも頼りなくなったものね…。」













そうフランテが小さく呟いたのは、フロウ以外に知らない。























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