大切なもの
―放課後―

私は志田くんと仕事の内容確認をしていた。


「これを毎回書くんだね…」


仕事内容かぁ…。特になし、ってアリかな?


何枚もの紙が挟まれた、分厚いファイルを眺める。


「俺、そういうの苦手だわ…」


字ぃ下手だし。といいながら左手を首にやる志田くん。


「志田くん、字を書くの苦手なの?」


「まぁな。あ、志田くんって堅いから。トモって呼べよ!」


「えっ!?」


トモ!?…係ってこんなに距離が縮まるものなの?


「えっと、じゃぁ私も実紗でいいよ!」


…ってなに言っちゃってんの、私。ハズカシ…。


「わかった」


それから他愛もない話をして図書室を出た。


「帰り、送るから」


「えっ、いいの?悪いよ!」


正直、うれしい。けど…私の家は少し歩かないといけないから…。


「いいよ。こんな暗いんだし。実紗だって女だぞ?ぶっそうだ。」


「うーん…じゃあよろしくお願いします」


「おうっ」


うわぁぁっ…。名前で呼ばれちゃった。


自分の名前がゴージャスに聞こえるっ。

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