素敵な上司とキュートな部下
二人が居酒屋を出たのは、加奈子が乗るJRが間も無く終電になろうかという時刻だった。


「悪かったね。こんな遅くまで付き合わせちゃって……」


駅へ向かって歩きながら香川は言った。女性にしては背が高めの加奈子だが、香川は加奈子よりも更に頭半分ほど背が高い。

その香川が、少し屈むようにして加奈子に話し掛けるのだが、顔と顔が今までよりもずいぶん近いように加奈子は感じた。不快ではなかったが。


「いいえ、とんでもありません。ご馳走になっちゃって、こちらこそすみません」

「ところで、君は一人暮らし?」

「いいえ、実家です。両親と弟と4人暮らしです」

「そうか。ではご家族が心配してるかな?」

「それは大丈夫です。私はもう子供じゃありませんから……」

「そう? しかし家族がいるって羨ましいなあ」

「香川さんは……?」

「僕は一人さ。賃貸のマンションで一人暮らし。寂しいもんさ」

「そうなんですか……」

「今度……」


と言ったきり、なぜか香川の言葉はそこで途切れた。

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