紫陽花ロマンス


通路に面したオープンカフェからは、通路沿いに並んだ数本の笹が見える。


先週、大月さんと願い事を書いた短冊を吊るした笹は、五本並んだうちの左端。さすがに短冊までは見えない。


一週間経って吊るした短冊が増えてるし、今もまだ願い事を書いている人たちがいる。


「僕らの書いた短冊、埋れてるね」


笹を見ていたら、大月さんがくすっと笑った。


「そうですね、もう探せないかも……」


グラスではなくてプラ容器に入ったアイスコーヒーは、ストローをくるくる回しても涼やかな音はしなくて物足りない。


「今日は光彩ちゃんは実家だね、晩御飯は実家で? それとも家に帰ってから作るの?」

「土日はたいてい実家です、晩御飯のあと光彩をお風呂に入れてくれることもあるし……実家に頼りすぎかな」


実は今日もお風呂に入って帰るつもり。
さっき母に『少し遅くなる』と電話をしたら、先に晩御飯を食べてお風呂に入れておくと言われた。


明日は保育所を休ませると母が言ってたから、光彩だけ実家にお泊まりになるかもしれない。






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