紫陽花ロマンス
12. ともにいること


もう、男なんかに頼らない。
離婚した時に決めたはずだった。


男なんか当てにしないし、絶対に信用しないと。つい先日、会社の元同僚と会った時にも宣言したのに。


私の頭の中には、常に大月さんがいる。


大月さんの言葉や気遣い、すべてが私の心を揺さぶる。


考えてみたら、大月さんと元旦那はタイプが全然違う。


元旦那は格好ばかり気にする調子乗りだった。まあ、どちらかというと男前だったんだけど。


大月さんは違う。いい格好する人ではなさそうだし、格好だけでなくて本当にいい人。調子に乗ったりとかしなさそうだし。


大月さんの言う『やましい気持ち』が、元旦那とは本質的に違うのだと思う。


元旦那は会った時から、『やましい気持ち』でいっぱいだった。知り合ったのは職場の合コンで、酔った勢いでそのまま……だったのだから。


大月さんは男として、どうなんだろう。


そういうチャンスはあったはず。光彩と一緒に家に送ってくれた時も上がり込むチャンスだったのに、玄関先で帰っていったし。


手を握るというより私の手を包み込んだのと、頭を撫でてくれただけ。


私が勝手に気にしているだけで、大月さんにはそんな気はないのだろうか。





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