紫陽花ロマンス



一度目の浮気の後も彼女との関係が続いていたのか。一度は彼女と別れたけど、寄りを戻したのかは知らない。知りたくなかったから、問い詰めたりしなかった。


取り乱したりするのは惨めだと思ったから、私は極めて平静を装った。冷めた目で元旦那を見据えて、抑揚のない声で淡々と話すように努めて。


もう、あなたには何の愛情もない。
もう、あなたが何をしようが興味もない。


私は、あなたじゃなくてもいい。
だから、好きにすればいい。


そう言いたげな私を必死に装った。


だけど、本当は否定してほしかった。
着信は彼女じゃないと言ってほしかった。信じてくれと言って、抱きしめてほしかった。


私だけを愛してると……


心の中には『どうして?』と取り乱して泣いている自分がいるのに、私は目を逸らした。


そして、彼に『別れて』と告げたのだ。


ほんの僅かな望みを抱きながら。





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