紫陽花ロマンス


結局、お昼御飯も喉に通らないまま休憩時間は終わった。


仕事に戻っても、ふとした拍子に嫌な映像が脳裏に蘇ってくる。胸が熱くなって涙が滲んできたり、うだうだな気持ちは溜め息になって漏れる。


レジに立っていると、チーフがやってきた。


「萩野さん、体調悪いの? 大丈夫?」

「いいえ、大丈夫です」


見透かすような目で、チーフが私を見つめてる。それだけで、ぐらりと胸が揺らいだ。


「本当に? 顔色悪いよ、ちょっと休んでくる?」


肩に触れたチーフの手は温かくて、私の涙腺を刺激する。


「いいえ……」


口を開くと同時に、涙が溢れ出た。
大粒の涙は、拭っても拭いきれない。


チーフが肩を抱いて、私を事務所へと促す。


「萩野さん、今日はもう帰っていいから、ね。ゆっくり休みなさい」


チーフの気遣いで、私は早退することになった。
なんて情けないんだろう。



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