はじまりは政略結婚
突然、意味不明なプロポーズをされて、返事なんて出来るはずもない。

だいたい、パーティーの余興なんじゃないかと思うくらいなのに、本気で受け取れるはずがなかった。

「智紀、悪いけど私……」

もちろん断わろうと思っていたのに、口を開いた瞬間、智紀はサッと側に寄って耳打ちをしてきたのだった。

それにしても、BGMがうるさすぎて、まるでクラブハウスにいるみたいだ。

「由香、とりあえず、ここはオレのプロポーズを受けとけよ。お前の大好きなお兄ちゃんの為にも」

「えっ? お兄ちゃん……?」

いきなり兄という言葉が出てきて動揺する。

そういえば、いつの間にか姿を消していたし、まさか智紀が何か脅してるとか、そういう訳があったらどうしよう。

いくら親友で同じ副社長同士でも、家柄的にも会社の位置付け的にも、智紀の方が上だ。

何かのトラブルで、二人の仲に亀裂が入った可能性もあるはず……。

もしそうだとしたら、なんて智紀は卑劣なんだろう。

だから、こんな派手な人は信用出来ないのだ。

険しい表情を見せる私に、彼は今度は周りに聞こえるように言ったのだった。

「ほら、照れないで返事してくれよ。由香の返事が聞きたいんだ」

意図の分からないプロポーズだけど、兄を人質に取られたのなら、とりあえずここは智紀の顔を立てた方が無難かもしれない。

本当に嫌々だけど、受け入れてから後で追及して白紙撤回しよう。

「……よろしくお願いします」
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