はじまりは政略結婚
「細かいっていうか、由香が何をしてるのか、純粋に気になっただけだよ。でも、その指輪をはめてくれるのは嬉しい」

そう言うと、智紀は私の体に手を回し、優しく抱きしめキスをした。

昨夜覚えた違和感は、単に私の思い過ごしなのかもしれない。

そんな風に思うくらい、いつの間にかこの人の温もりを欲しいと思うようになっていた。

そんなことを思いながら顔を胸に埋めていると、智紀が小さく笑った。

「どうする? 今日は出かけるのやめて、家でゆっくりするか?」

「えっ⁉︎ ううん、せっかくだから出かけたい……」

我に返り体を離すと、智紀はケラケラと笑っている。

「オレはどっちもしたいから、家でゆっくりは夜のお楽しみにしておく」

ニヤリとした智紀は、その言葉を残して先に寝室を出ていく。

普段通りの彼の様子に、ホッと安心しつつ、照れ臭さも一緒に後を追って部屋を出たのだった。
< 123 / 360 >

この作品をシェア

pagetop