はじまりは政略結婚
外は初夏の雰囲気そのもので、晴れ渡る青空が広がり、眩しいくらいに陽の光が降り注いでいる。

「出かけるには絶好だな。それに、海岸沿いを走るなんて、夏そのものって感じだ」

車に乗り込みながら、智紀のテンションが上がっていくのが分かり、私も嬉しくなってきた。

「良かった、智紀が楽しそうで。昨日、サカナケの話をした時は、あんまり乗り気じゃなかったじゃない? 好みの場所じゃなかったのかなって、ちょっと心配だったの」

助手席に乗り込んだ私が、シートベルトを締めたのを確認して、智紀は車を走らせた。

相変わらず、柑橘系の匂いがする車内だけど、さっぱりした印象だからか、今日みたいな暑い日にはピッタリだ。

「ごめんな。そんな気を遣わせてたんだ? 好みじゃないなんてことはないよ。むしろ、行ってみたい。だけど、由香が何でそこを誘ったのかなって、それが気にかかったんだよ」

「え? 何でって……。それは、智紀が静かな場所に行きたいって言ってたから。けっこう雰囲気のいいお店だから、いいかなって思ったんだけど……」

一体、何が疑問だったんだろう。

いまいち意味が掴みきれず答えると、ハンドルを握り、真っ直ぐ前を見据えた智紀が言ったのだった。

「雰囲気のいい場所なんだろ? 由香がそこに一緒に行った相手って、本当にただの友達なのかなって、子供じみた疑いを、昨夜から悶々と抱いてた」
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