はじまりは政略結婚
「ええっ⁉︎」

と、過剰に反応したのは私で、イカを焼いてる空気が熱いからか、それとも恥ずかしさからか、顔が火照っていくのが分かる。

そんな私に店主は、イカをひっくり返しながら言ったのだった。

「だって仲良さそうに手を繋いで歩いてきたし、そんな大きなダイヤの指輪してるから。それ、ダイヤでしょ?」

小さく頷く私をフォローするかのように、智紀が半歩前に出た。

「まだ夫婦じゃないんですよ。でも、もうすぐ結婚するんで」

愛想良く答える彼の横顔を、思わず見上げる。

確かに、言っていることはウソじゃないけど……本当でもない。

呆気に取られている私に、智紀は穏やかな笑みを向けた。

それが照れ臭くて、つい俯いてしまう。

「それはいいことだねぇ。美男美女カップルで羨ましい。ほら、イカ焼けたよ。買う?」
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