はじまりは政略結婚
智紀は柑橘系の匂いが好きらしく、身につけるコロンも同じ系統のもの。

歩いているだけでもふわりと香るその匂いは、抱きしめられるとより強く分かった。

自分の気持ちを伝えると、不思議とこの香りすら、自分のものにしたくなる。

「夢みたいだなんて、ちょっと大袈裟すぎるよ」

胸に顔を埋めた私がそう言うと、智紀は抱きしめる腕の力を強めた。

「だって由香は、オレがずっと想っていた女性だったんだから。その由香から好きだって言われたら、夢を見ているみたいに感じるだろ?」

「でも……、その割には可愛い子とたくさん付き合ってたんだよね?」

テレビの中の言葉が忘れられず、それを言ってしまうと、智紀はその場にゆっくりと私を倒した。

そして見下ろしながら、少しバツ悪そうに口を開いたのだった。

「正直、由香を忘れる為に付き合ってたようなもんだったから。最低だと思うだろ?」

「うん。ちょっと……」

反応に困りつつも、胸がキュンと締め付けられる自分に呆れてしまう。

そこまで想われたことなんて、一度もなかったから。
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