はじまりは政略結婚
ここで、私たちが付き合っていたことを話すわけにはいかないから、『友達同士』という言葉も納得出来る。

だけど、中途半端に知り合いと名乗るくらいなら、他人の振りをしてくれてもいいのに……。

だいたいどうして今さら、指輪を身につけているんだろう。

「すっかり感じが変わってるな。似合ってるじゃん。由香は改めて見ると、美人なんだな」

付き合っている頃には全然言ってくれなかったセリフを、久しぶりの再会で並べられて戸惑いを覚える。

その海里は一歩私に近付いて、手を優しく取ったのだった。

そして、半歩後ろにいる智紀に目を向けた。

「嶋谷副社長、由香さんを借りていいですか? 撮影がかなり押してるし、彼女ならエキストラの穴埋めが出来ると思うんですが」

まだ言っているけど、エキストラとは何だろう。

意味が理解出来ないまま、頭が混乱状態の私の横に智紀が並んだ。

「由香には無理だよ。彼女はモデル経験も撮影経験もない。それより、手を離してくれるかな?」
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