はじまりは政略結婚
「いえ、違います。それに、ここには勢いで来ちゃっただけで、何をしているのかも分かっていませんし」

引きつった笑いを彼女に向けながら弁解していると、背後から懐かしい低い声が聞こえてきた。

「由香、久しぶり」

その声に、心臓が跳ね上がりそうになりながらゆっくり振り向くと、海里が立っていたのだった。

「か、海里……」

雑誌で見るよりずっと垢抜けた感じの彼は、今日の朝までの智紀のヘアスタイルにとてもよく似ている。

桜さんと同じくカジュアルスタイルで、胸にはシルバーのネックレスをつけているけど、そのチャームを見てさらに固まってしまった。

だってそれは、私とのペアリングだったからだ。

プラチナの少し太めの指輪で、真ん中にペリドットの四角形の宝石が組み込まれている。

ペリドットは、8月生まれの私の誕生石で、それを海里がオーダーして作ってくれたものだったのだ。

まさか、まだ持っているとは思わなく、指輪から目を離せない。

私のものは、ジュエリーボックスの奥にしまいこんだままだというのに……。

「あれ? 海里さんと百瀬さんって、知り合いなんですか? 」

興味津々の桜さんに、海里はニコリとして答えた。

「ああ、友達同士だったんだよな。けっこう、仲が良かったんだよ」
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