はじまりは政略結婚
「そういうわけなんだ。うちも生き残りが大変だし、智紀と提携出来ればかなり心強い。今日は、母さんたちは仕事で来れなかったけど、智紀のお母さんも結婚には賛成してくれているから」

兄は、何とか私を説得しようとしているけれど、知らない間に話が進んでいたのかと想像して腹が立つ。

要するに、私以外のみんなが結婚には賛成しているということか。

それに、私の兄を思う気持ちまで利用されたのだから、ますます許しがたい。

それも、当の本人がそれを自覚して、私を連れて来たのだから。

くるりと振り向き、少し速い歩調で智紀に近付くと、指輪を外して突き返したのだった。

「これ、返すわ。私は智紀とは結婚をしない。それに、そもそも合わないと思うから」

さすがの智紀も、少し動揺する表情を見せながら指輪を受け取った。

まさか、私が意見しないとでも思っていたのか、父たちは口を開けて驚いている。

だけど智紀は、すぐにいつもの冷静さを取り戻して口を開いたのだった。

「合うか合わないかなんて、もう少し接してみないと分からないだろ? なにも、入籍を今すぐすると言ってるわけじゃないんだ。答えを出すのは、後からでもいいじゃないか」
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