はじまりは政略結婚
どうやら智紀は、プロポーズを撤回する気はないらしい。

私に、ひとまず付き合ってみろと言わんばかりに、外した指輪を半ば強引にはめ直した。

実は、この指に指輪がはめられたは初めてなのに、ドキドキする気持ちになれないなんて、惨めで情けなくなってくる。

今まで付き合った人はいたけれど、指輪を貰ったことがない。

だから、年甲斐もないと自覚をしつつ、『左手薬指に指輪』は憧れだったのだ。

それが、こんな風に強制的にはめさせられると、高価なダイヤも私を縛る道具に見えてくる。

「それでも、私の本心は結婚なんて嫌だって気持ちで、変わることはないと思う。それに、なかなか会う機会もないでしょ? だったらなおさら、私が智紀を好きになることも、結婚したいと思うこともない」

彼がどういう気持ちで、政略結婚を提案してきたのかは分からないけれど、とにかく私の気持ちを分かってもらいたい。

本当は、こんな風に意見をきっぱり言うのも緊張するけど、結婚を拒否したい気持ちでいっぱいだった。

だけど智紀は、そんな私に相変わらず調子のいい笑顔を向ける。

「その心配は無用だ。オレたち、今夜から一緒に暮らすから」
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