はじまりは政略結婚
兄の部屋は、智紀のところと比べるとシンプルで落ち着いた雰囲気だ。

クリーム色の革張りソファーへ私を座らせた兄は、温かいお茶を持ってきてくれたのだった。

「ほら、飲んで少し落ち着いたらいい。智紀には電話しておいたから。あいつ、かなり落ち込んでたぞ?」

手渡されたお茶を一口喉に流し込み、小さくため息をつく。

今夜は涼子さんが来ていなかったのと、兄がまだ起きていてくれていたのとで助かった。

「智紀が悪いんだもん。お兄ちゃんだってひどい思うでしょ?」

隣に座った兄は、小さく微笑んで頭を撫でてくれた。

子供の頃から、私がベソをかくとそうしてくれる。

そんな懐かしさとお茶の温かさで、少し心が落ち着いてきた。

「確かに、ひどいよな。こんなに可愛くなってるのに。だけど、あいつは嫉妬で頭がいっぱいだったんだよ」

「嫉妬?」

「ああ、由香と海里のことを知ってしまって、あいつなりに苦しんだんだと思う。ただ、表現の仕方が子供ぽいけどな」
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