はじまりは政略結婚
「ああ、今日は早めに終われたんだ。まだ帰ってないなら、迎えに行こうか?」

何気ない会話でも、お互いどこかぎこちなくなるのは、やっぱり昨夜を引きずっているからだ。

いつもなら、迎えに来てもらうところだけど、今日は思わず断ってしまった。

やっぱり、あんなケンカをした後だし気まずい。

とはいえ、結局は智紀と顔を合わせることに変わりはないのだから、ドキドキしながらマンションへ向かったのだった。

電話を終えてから20分後、鍵を開けて部屋へ入ると、すでに帰宅していた智紀が、少し硬い笑顔で出迎えてくれた。

「おかえり、由香。一日ぶりだな」

「う、うん。ただいま……」

謝らなくちゃ。

そう思うのに、いざ智紀を前にすると、恥ずかしさと緊張で『ごめんね』の言葉が出てこない。

「どうした? ほら、靴脱げよ」

玄関先でモジモジしている私に、優しく声をかけてきた智紀は、まだスーツ姿だ。

きっと彼も、帰ってきたばかりに違いない。
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