はじまりは政略結婚
「うん……」

ゆっくり靴を脱ぐと、それを確認した智紀がリビングへ向かう。

その後ろ姿を追いかけるようについて行くと、フッと彼の笑った声がした。

「やっぱり好きだな。由香がついてくる足音を聞くのは。昨日は、本当にごめんな」

立ち止まって振り向いた智紀は、申し訳なさそうに眉を下げている。

そんな彼を見て、私の想いは溢れていくようだった。

「違うの。悪いのは私。子どもぽい拗ね方をして、本当にごめんなさい」

思い切り頭を下げると、次の瞬間に優しく撫でられた感触がした。

「違う。悪いのはオレだよ。由香の気持ちも考えずに、自分の感情をコントロール出来なくてさ。本当は、一目見て可愛いと思ってたよ、ヘアスタイル」

そう言われ、気恥ずかしさを感じながら顔を上げる。

「もういいよ、智紀。気を遣わないで」

「気なんて遣ってない。本当だよ。ただ、今までで充分良かったんだけど……」
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