はじまりは政略結婚
ため息混じりに呟くと、ハンドルを握る智紀が、視線を一瞬私に向けた。

「そのうち、今日行く別荘は由香のものにもなるよ」

そう言われ返す言葉に詰まり、視線を窓の景色に移した。

智紀から改めてされたプロポーズの返事を、まだしていなかったと、今さらながらに気づく。

里奈さんも宣戦布告をしてきた割には何もしてこないし、私が思うほど深刻なことは何もないのかもしれない。

それなら、彼からのプロポーズの返事を引き延ばしている意味はないのか……。

スッキリしない気持ちも嘘じゃなく、智紀へかける言葉はどうしても見つからなかった。

それからは、たわいもない会話だけをして一時間後、車はプライベートビーチへ着いたのだった。

「き、綺麗……。想像以上よ、智紀」

車を降りた私は、興奮気味に砂浜を歩く。

海岸沿いの通りを脇道にそれたところに、このビーチはあり、さらさらとした砂浜と太陽に反射する海面が絵に描いたように美しかった。
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