はじまりは政略結婚
涼子さんは、本当に智紀が好きなのだと、寂しそうな笑顔で分かった気がする。

そして、それが報われない想いだということを分かっているみたいだ。

意地悪いことを言わなければ良かったと、自己嫌悪に陥りながらついていく。

黙ったままの私に、廊下右奥の部屋のドアの前で立ち止まった涼子さんは、いつもの優しい笑顔を向けた。

「ここよ。荷物を整理したら、下のリビングで待ち合わせね」

「はい……」

完全に落ち込んでしまい、気の弱い返事しか返せない私の肩を、彼女は軽く叩いた。

「どうしちゃったのよ、由香ちゃん。元気がないと智紀が心配するよ? 今日は、私たちにも楽しんで欲しいと思って、祐也と智紀が考えてくれたんだから」

「お兄ちゃんたちが?」

「そうよ。本当は、仕事の話でふたりだけで来るつもりだったみたいなの。でも、由香ちゃんはなかなか智紀とゆっくりできないでしょ? それで誘ってくれたのよ。ちなみに私は『ついで』」
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