はじまりは政略結婚
「本当、立派ですね。別荘って呼ぶには違和感あるかも……」

思わず立ち止まった私に、涼子さんはクスッと笑った。

「私も、初めて来た時に思ったの。それにしてもオシャレよね? 元々プロヴァンス風が好きなんだけど、この無垢床なんて、特に好きなの」

テンションが上がっている涼子さんから、本当にこの場所が好きな想いが伝わってくる。

それは、単にここが好みにハマっているから?

それとも、智紀を思い出せる場所だから……?

それを考えていると、涼子さんに対して意地の悪い気持ちが込み上げてきた。

「そういえば、ここも柑橘系の匂いがしますね。涼子さんて、この匂い嫌いじゃなかったでしたっけ? 兄から聞いたことがあります」

それを言ってどうするんだろう。

涼子さんのことは好きなのに、こんな気持ちを抱くのも嫌だ。

だけど、言わずにはいられなかった。

「うん……。好きじゃない。ちょっと切なくなるから……」

寂しそうな笑顔を浮かべた涼子さんは、私に二階を指差した。

「行きましょ。智紀の部屋は一番奥なの」
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