はじまりは政略結婚
涼子さんは、満足げにそう言うと、兄との部屋へ向かった。

そして私は、初めての場所に緊張しながらドアを開けたのだった。

「す、すごい……」

部屋に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのはキラキラと輝く海で、バルコニーへ出られる窓はすでに開いていた。

海風が爽やかに吹いてきて、カーテンを揺らしている。

キングサイズのベッドにチェスト、そしてクローゼットと、基本的な家具の他に、1人掛けソファーが丸テーブルを挟んで、向かい合わせで置かれている。

「この景色の良さが、智紀のお気に入りなのね」

バルコニーに出て海を眺めていると、心が癒されていく感じがする。

「気持ちいい。私のことを考えてくれていたなんて、嬉しいよ智紀……」

『何かしてあげたい』なんて、気を遣わなくてもいいのに。

私には、智紀が側にいてくれる、それだけで充分……。

ふと目を動かすと、体がスッポリ埋まりそうなほどの籐でできた椅子があり、試しに座ってみると心地いい。

陽の光と海の風を肌に感じながら自然と目を閉じていると、いつの間にか眠りに落ちていたのだった。
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