はじまりは政略結婚
こんな夜中に仕事の話……?

不審に思いながら、息を殺して見つめていると、智紀が深いため息をつきながら写真を一枚指に挟んで持ち上げた。

「この写真をどうするかなぁ。由香には、絶対に見られるわけにはいかないし」

なんの写真を持っているのか、私の名前が出てきてびっくりする。

「そうだよな。まさか、涼子とお前が抱き合ってる写真が出回ってるなんてな」

兄は腕組みをし、苦い顔をした。

まさか、海里が見せてきた写真のこと?

それが、どうして出回ってるわけ?

それに、智紀も兄もそれを知っている……?

何が何だかわけが分からなくて、頭が混乱してくる。

「涼子も後悔してたよ。軽々しい行動をしたって。まあ、オレとしては涼子を責めるつもりはない。あいつが智紀を好きなのは知っていたし」

兄はため息をついて、ソファーに体を沈める。

まさか、兄が涼子さんの気持ちを知っているとは思わなくて、ア然としてしまった。
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