はじまりは政略結婚
それは、一瞬では理解出来ない言葉で、それまでの怖さや情けなさは飛んでいった。

「え? 智紀、今何て言った?」

抱きしめられているから彼の表情は分からないけれど、速い鼓動が背中から伝わってくる。

意外なことに、智紀は緊張しているみたいで、それが余計に私をドキドキさせた。

ほんの数秒前は恐怖を感じていたのに、今は胸が締め付けられそうな気持ちに変わっている。

「一回で聞けよ、人の告白を。由香を好きだって言ったんだ」

「私を好き……? だって、そんな素振りは全然見せてなかったじゃない」

突然の告白に戸惑いを隠せない私は、智紀の気持ちを確認するだけで精一杯だ。

すると、ゆっくりと体を離した彼は、今度は私を振り向かせた。

「由香がオレを見てなかっただけだろ? 祐也に会いに行ってたのも、何気ない話を振っていたのも、全部お前を好きだったからなんだけど」

真っ直ぐ見つめる智紀からは、いつもの派手でノリのいいことを好む雰囲気は、微塵も感じられない。

だからこそ、余計に戸惑ってしまった。
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