はじまりは政略結婚
いつも包み込むように私を抱きしめてくれる彼からは、余裕が感じられるほど。

だけど今は、明らかに違う。

抱きしめる腕が、少し震えていた。

「ありがとう、由香。信じられないくらいに嬉しいよ。幸せにする、絶対に。だから、いつまでもオレを信じていて欲しい」

「うん……。私こそ、ありがとう。ねえ智紀、震えてるね?」

「当たり前だろ。あんなに好きだった由香が、プロボーズを受け入れてくれたんだ。体も震えてくるよ」

意外な一面に、愛おしさが増してくる。

テレビに出てみたり、毎日芸能人を相手にした仕事をしているのに、私のプロボーズの承諾に震えているなんて。

「愛してる、智紀……。私、あなたのことを誤解したままじゃなくて良かった。ありのままの私を、ずっと受け止めてくれてたものね」

この気持ち、少しでも伝わってくれたらいい、その想いで口にしたけど、智紀には伝わったのかどうか……。

返事のない彼の反応が気になって、そっと体を離した。
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