はじまりは政略結婚
「本当、最悪……」

兄の気分を害しただけでなく、智紀の真相も分からないままだった。

兄は違うと否定した感じだったけど、正直なところ、その根拠は分からない。

モヤモヤした心が晴れるどころか、ますます憂鬱になった。

「帰るの嫌だな……」

重い足取りで帰ると、兄の言葉通り、ちょうど仕事帰りの智紀と一緒になったのだった。

「由香は、今帰ったのか? 遅かったんだな」

今朝のことを思い出すとぎこちなくなるけど、それは彼も同じみたいで話し方が遠慮がちだ。

玄関の鍵を開けた智紀が、私を先に中へ入れてくれた。

「お兄ちゃんと、会ってたから……」

靴を脱ぎ、リビングへ向かうと、一足遅れで智紀もやってきた。

「そうか。良かったな、オレも昼間に会ったよ」

「そう……」

何気ない会話もぎこちなく、重苦しい雰囲気が居心地悪い。
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