はじまりは政略結婚
それから智紀は、私の存在なんて目に入らないかのように、着替えを済ませシャワーを浴びると、また書斎へ籠った。

「智紀、ご飯は……?」

まさか、怒らせた……?

嫌なドキドキを感じながら部屋のドアをノックすると、「いらない」とだけ素っ気ない返事が返ってきた。

「そう……。分かった」

仕方なくキッチンへ行き、冷凍物で済ませる。

せっかく、智紀とまた幸せな時間を過ごせると思っていたのに、私の軽々しい言葉のせいで彼を傷つけてしまった。

疑われて、智紀はきっと不愉快だったに違いない。

「どうしよう……」

あんなに機嫌を悪くしたのだから、違ったんだ。

というより、最初から疑うことが間違ってた。

謝りたいけど、今は相手にしてもらえなさそうだ。

仲直りをするきっかけを掴めないまま、その夜私たちは別々の部屋で眠ったのだった。
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