はじまりは政略結婚
私は、彼から『違う』とハッキリ聞きたいだけなんだと、今になって分かる。

智紀のような立場の人には、理屈だけでは片付けられないこともあるって、それは理解しているつもり。

だけど、いくら未練がない人とはいえ、一度は本当に好きになった人の過去なんて売って欲しくない。

だから、違うと言って欲しい。

「智紀がネタを売ったんじゃないよね……?」

すがる気持ちで彼を見ていると、深いため息をつかれた。

「さすが、由香だよな。オレを信じきるんじゃなくて、疑うんだ?」

「え? 」

一瞬、何を言われたのか分からなくて、思わず聞き返した。

「疑われてるんじゃ、何を言っても無駄だと思う」

「えっ⁉︎ ちょ、ちょっと智紀……」

冷ややかな目で私を見た智紀は、寝室ではなく仕事部屋として使っている書斎へ足早に入っていった。

きっと否定してくれる、そう思っていた私は、しばらくその場に呆然とするしかなかったのだった。
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